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あらかじめ決められた恋人たちへ – NEW ALBUM 『DOCUMENT』 RELEASE

[2013/07/03]

あらかじめ決められた恋人たちへ - NEW ALBUM 『DOCUMENT』 RELEASE

Profile of |あらかじめ決められた恋人たちへ|


幾多のフェス、ツアーを経験しスケール感の増した轟音インスト・ダブ・ユニット “あら恋”、
自主レーベルを立ち上げ、2 年ぶり待望のフル・アルバムをリリース。
“旅立ち” をコンセプトに構築された、シネマティックに疾走するサウンドが胸を貫く。

鍵盤ハーモニカで奏でられる叙情的な旋律を、浮遊感のあるダブ~シューゲイズなサウンドの中で響かせるインストゥルメンタル・ユニット “あらかじめ決められた恋人たちへ(通称:あら恋)” が、自主レーベルを立ち上げ 2 年 3 ヶ月ぶりとなるスタジオ・フル・アルバム『DOCUMENT』をリリースする。FUJI ROCK、朝霧 JAM、RISING SUN、ARABAKI、taicoclub など各地のフェスに出演し、ライブ・バンドとして著しい成長を遂げた彼ら。そんなユニットとしての変化や進化を “旅立ち” というテーマに捉え直す形で制作されたのが本作であり、ロードムービー的とも言えるスケールの大きさとストーリー性の高さが特徴となっている。

サウンド面では、バンドとしての迫力を維持しつつ、エレクトリックなビートが大胆かつ緻密に組み入れられ , ライブとは異なるレコーディング作品ならではの完成度と魅力を追求している。また、ピアノや大竹康範(LAGITAGIDA)によるギターが全面的にフィーチャーされているほか、ホーン・セクションの導入など、これまで敢えて封印してきた手法にも意欲的にチャレンジ。早くもライブでアンセム化しているダンス・チューン「Res」、10分を超えるミニマル・ファンク「テン」、ノイズシャワーの中で鍵盤ハーモニカが舞う壮大な「Fly」など約 60分、全8曲収録。鍵盤ハーモニカの音色が想起するノスタルジーや温かみは不変でありながらも、オルタナティブなダンス・ミュージックとして成立している一枚である。

art work は『CALLING』同様、SHOHEI TAKASAKI が担当。また、17 分を超える長尺 MV「翌日」や、逆再生 MV「Back」が話題となった柴田剛監督が、本アルバムのリードトラック「Fly」の MV を製作中である。


リーダー池永正二のコメント

前作から2年と3ヶ月。
日々たまっていくものを期間を決めず音という形で紡ぎ、掬い上げて、やっとアルバムが完成しました。
産まれた人、亡くなった人、やめた人、向かう人、帰る人、止まる人、動く人、様々な出会いや別れ。世の中は 3.11 以降も相変わらず問題が山積みで、なんやよう分からん。胡散臭さばかりが鼻につく。これはそんな2年と3ヶ月のいろいろな記録です。
拭いきれないネガティブな現実もありますが、影は影のまま光のあるもの、影を辿ると必ず光があるわけで、それらを一緒にグワッと描きたかった。

「旅立ち」とはネガティブな影から光に向けてのポジティブな原動力、第一歩。
なんだっていいんだよ。一歩踏み出せばそれは旅立ちになるんだから。そんなアルバムにしたかった。まずは自分が一歩前へ踏み出したかった。

誰もが想う、普遍的で日常的なものの影に隠れている、光に向けての8編の記録。
素晴らしいものが完成しました


あらかじめ決められた恋人たちへ - NEW ALBUM 『DOCUMENT』

あらかじめ決められた恋人たちへ
『DOCUMENT』
2013.09.11 RELEASE

01. カナタ
02. Res
03. Conflict
04. へヴン
05. クロ
06. テン
07. days
08. Fly

KI-NO Sound Records / ¥2,600 (tax in)

4枚目のスタジオ・アルバム『CALLING』(2010 年)、さらに 2 曲 30 分のロング EP「今日」(2012 年)をリリース後、アルバムに向けた楽曲制作を本格的にスタート。バンド・サウンドを確立した『CALLING』以降、ダブをベースとしながらもシューゲイザーや 90’ s ギター・ポップの要素も採り込んでいったように、本作でもジャンルに縛られない音作りが念頭に置かれた。一方で、収録された楽曲群は、すでにライブで披露されているものも含めて音源用のリアレンジがなされており、ライブとの明確な差別化も図られている。例えば、ライブでは欠かせないパーカッション(ダラブッカ)を『DOCUMENT』では使用していないほか、生ドラムを敢えてオミットし、エレクトロ・ビートのみで構成された楽曲も存在する。

オープニングを飾る「カナタ」は、儚いギターのアルペジオから爆音に雪崩れ込むエモーショナルなロック・チューン。ダイナミクスを意識したアレンジがセンチメンタリズムを刺激する、アルバムの幕開けに相応しい 1 曲である。

2曲目「res」は、「アニマル・コレクティブのような、開放感のあるサウンドを目指した」(池永)という、ポップさが全面に押し出された色彩豊かなダンス・ミュージック。「ラセン」や「Back」、「前日」の系譜に属した楽曲で、シューゲイズなギター・ノイズとピアノが生み出す高揚感が、ライブでも新たなアンセムとして好評を得ている。

続く「Conflict」は、アグレッシブなダンス・ビートが特徴的な、本アルバムの中でも異色の 1 曲。サビには鍵盤ハーモニカ 2 台を配しつつも、ストイックな展開が疾走感に繋がっている。

長尺の「ヘブン」は、池永が感銘を受けたという川上未映子の小説「ヘブン」に対するアンサー・ソング。サンプリングされた管楽器のフレーズを大胆に導入しているのが印象的で、「真夜中の都会」を想起させるクールな仕上がりのバックトラックに、ハートウォーミングな鍵盤ハーモニカが同居しているのが心地良い。

5曲目「クロ」は、The Album Leaf など海外のポスト・ロック勢からの影響をフィードバックした作品。フォーク
トロニカとも共振する叙情的電子音が散りばめられたミディアム・テンポの楽曲だが、ラストに Dinosaur.jr を彷彿とさ
せるノイジーなギターソロが挿入されており、一筋縄ではいかないあら恋ならではのアイディアが強烈なインパクトを
残す。

続く「テン」は、すでにライブで披露されている長尺のミニマル・ファンクで、「ベーシック・チャンネルとニューロシスが一緒に演奏している感じ」(池永)と語るように、ヘビィなギターリフとミニマルなリズム・デザインを軸に、あら恋が得意とするダブエフェクトを効果的に挿入。結果、EP-4 や ZAZEN BOYS「asobi」などと連なるノーウェイブ・ファンク・テイストとなっており、新たなファン層に訴えかけるパワーが感じられるものとなった。また、ライブでは鳴らされるパーカッションをカットしており、音源ではより無機質で、テクノ的なサウンドと言える。

ピアノによるインタールード「days」を挟んではラスト・ソング「Fly」。テルミン/ピアノによる儚い旋律と轟音ノイズウォールが鼓膜を震わせる、タイトル通り浮遊感に満ちたダブ・ポップ。精力的なライブ活動によって身に付けたスケール感、インストゥルメンタル・ユニットとして培ってきたシネマティックな音像が最高の形で融合した、ドリーミーで壮大なバラードとなった。今回のアルバムを象徴するリード・トラックかつエンディングロールでもあり、瞼の裏にいつまでも本作の余韻が映り込むようである。

(森 樹)

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