Ableton User Meeting Vol.7 1st Anniversary at Fai Aoyama ~REPORT~
Ableton User Meeting Tokyoが今夏1周年を迎えてのアニバーサリーイベントを青山Faiで行った。
アーティストやDJ、クリエーターに留まらず幅広い分野に渡って数多くのユーザーがいるソフトウェアAbleton Liveを用いて様々なプレゼンターがその使い方の解説、さらにはライブ実演をするなど、リアルタイムで作曲、制作、演奏をはじめアイディア次第で様々な即興アレンジを行うことができるこのソフトウェアの魅力を時には良識的に時には感覚的に伝えてくれる一風変わった交流イベントである。 知識やアイディア、ヒントを手に入れられる機会はもちろん、プレゼンテーションはプロジェクターを駆使して視覚的にもより解りやすく楽しめるのに加え、実践的なライブも繰り広げられるので音楽的な聴き所を見出す事ができるのもこのイベントの魅力の1つだろう。
この日のイベントは蜻蛉氏のオープニングDJでスタートすると、間もなくオーガナイザーで司会進行を務めるAbleton 認定トレーナー、Koyas氏とDJ At氏がタイムテーブルや注意事項等の説明を行っていく。別フロアに飲食も可能な休憩エリアがあるという事に加え商用利用でなければ写真、動画の撮影、録音もオールOKのTAPE FREEである事、さらに各所に充電できるポイントも設置されているなど非常に気の利いたユーザビリティとなっていた。 そしてプロジェクターを駆使し、解説を入れながらこの日の出演者のYOUTUBEを放映。程よく予備知識を養う事ができた。
オープンから1時間、18時を少し過ぎたところで最初のプレゼンター、Ableton Ninja Sessionが登場。
Ableton 認定トレーナーのYoshinori Saito氏 & DJ At氏のコンビで、この日は「MIDIいらず!?Ableton Liveとモジュラーシンセのシンクロセッション」と題しMIDIを使わずにAbleton Liveとモジュラーシンセを同期させる方法を良識的に司っていく。KORGのSQ-1というシーケンサーを使ってオーディオインターフェースを用いて繋げるという内容で波形なども確認しながら説明していくのに加え、このオーディオ信号でセットアップする事で、コスト面、持ち運ぶ機材の軽減、MIDIクロックでは補えない音符の切り替えなど様々なメリットを伝えてくれた。さらに中盤から終盤にかけてはAbleton Liveでの曲の変化のつけ方などより実践的な操作を実演を兼ねて披露してくれた。
続いて登場は、完全手動ブレイクビーツユニット「HIFANA」のメンバーで日本におけるフィンガードラミングのオリジネーター KEIZO Machine! 「どんな音楽にも打ち込みのドラムをのせてみんなでノリノリ♫自分ってすごい!と勘違いしよう♫」というポップなタイトルながら、百戦錬磨のライブ巧者らしい知識よりも経験に基づく手法でお気に入りの楽曲に打ち込みを乗せていく過程や、それをいくつか作ってストックしておく事で、重ね合わせてゲーム感覚で様々な遊びができる事、また現場においても常にフレッシュさが出せるという話しと共に圧巻のパフォーマンスを披露してくれた。愛嬌のあるトークの切れ味に会場中は終始笑いに包まれるも、ひとたびフィンガードラミングが始まると、その手元に思わず見入ってしまう圧倒的テクニックと柔軟な発想は遊び心に溢れていた。
その後、フロアではフィンガードラマー、TEEZVA氏のライブが繰り広げられた。ゆったりとしたヒップホップに鮮やかなフィンガードラムが心地よく響く。Ableton Liveと出会って人生が変わったとまで言った彼のライブはシーケンサーとは違うオーガニックな部分も大事にしているとの事。そして途中からは蜻蛉氏とヒューマン・ビートボクサーのReatmo氏もマイクで加わり熱を帯びた後、しばしのインターミッション(途中休憩)を挟みイベントは終盤戦へと突入していく。
森谷諭氏は新たに発売されたパフォーマンスコントローラー【Launchpad Pro】に関して従来のLaunchpadとの違い、追加になった機能、Ableton Pushと比べた時の優位性などをこちらも実演を交えて説明してくれた。また、各プレゼンテーションの後に、来場者からの質疑応答の時間とオ-ガナイザーのKoyas氏の補足などが加り、より理解を深めるのに効果的かつ双方向のコミュニケーションを高め、会場の空気は穏やかなものになっていた。
そしてこの日最後のプレゼンターはスペシャルゲスト、真鍋 大度氏。言わずと知れた日本が誇るトップクリエイター。坂本龍一氏とのインスタレーション作品やPerfumeのライブ演出などでその名を耳にした事がある人も多いと思うが、米Apple社のMac誕生30周年スペシャルサイトにて11人のキーパーソンの内の一人に選出されるなど国際的な評価も高い。プログラミングとインタラクションデザインを駆使して様々なジャンルのアーティストとコラボレーションプロジェクトを行う彼がどのようにAbleton Liveを活用しているのか一挙手一投足に熱視線が注がれる中、まず自身の経歴として、90年代のハードコアヒップホップを代表するGroup HomeやJeru The DamajaのバックDJをしていたエピソードを当時のライブ動画を交えて、ヨーロッパツアーに帯同した話しやブルックリンでのエピソードなども披露。元々DJだったという事でそれにまつわるツールを開発するという事から、Ableton Liveを使用するようになった経緯、そして最近イベントで用いられている人工知能DJの説明ではユーザーにアプリを入れて頂き、そこで興味があるアーティストや楽曲などを抽出しアルゴリズムを作るという流れなのだが、そこでAbleton Liveは自動でMIXするのに長けているという事、曲のクリップ情報やワープ情報が入っているテキストファイルを直接書き換える事でファイルをコピーしたりなどしなくても全部読み込めるとの説明に会場内はちょっとしたどよめきが起こっていた。さらに映像演出の際にドローンカメラの軌道をすべてAbleton Liveで管理している話しなども非常に興味深く、リアルタイム性、Maxなどのソフトや外部アプリとの連携、ソフトの安定性、ユーザインタフェースが優れているなどプロフェッショナルの視点からみた優位点の他、CGなどと併用して細かい動きをつけるなど、実際の映像をみながら貴重な話しを伝えてくれた。
そして、イベントは最終局面を迎え、Sakiko Osawa氏のライブ、硬質さと頭に絡みつくような四つ打ちに惹きつけられるように体は揺らされ、最後は再び蜻蛉氏のクロージングDJで幕を閉じた。
多彩な顔ぶれで、まったく異なる観点からそれぞれがAbleton Liveの魅力とさらなる可能性を示してくれた今回のAbleton User Meeting。
プロフェッショナルとして様々な局面で最先端のクオリティーを求める事も可能だし、ゲーム感覚で気軽にいじり倒す事でその面白さや奥深さを体感できる事もわかった。まさに千差万別、まだまだ小粋な使い方も沢山ありそうだ。
尚、このAbleton User Meetingは、『Ableton Meetup Tokyo』と改め、次回は2015/10/27(火)19時から三軒茶屋Space Orbitでの開催となるとの事なのでまた今後も注目していけたらと思う。
Ableton User Meeting Vol.7 1st Anniversary
2015年8月23日(日) 17:00~23:00
Fai Aoyama
(東京都港区南青山 5-10-1 H2 AOYAMA BLDG B1F ・ B2F)
後援:株式会社ハイ・リゾリューション
-出演者-
【プレゼンター】
真鍋 大度
「Ableton Live の様々なユースケース」
KEIZO Machine! (HIFANA)
「どんな音楽にも打ち込みのドラムをのせてみんなでノリノリ♫自分ってすごい!と勘違いしよう♫」
Ableton Ninja Session (Ableton 認定トレーナー Yoshinori Saito & DJ At)
「MIDIいらず!?Ableton Liveとモジュラーシンセのシンクロセッション」
【Live】
Sakiko Osawa (Oiran Music)
Teezva
【DJ】
蜻蛉
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