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GROUNDCOVER. Interview

[2019/12/13]

GROUNDCOVER. Interview

実に9年振りのフルアルバムとなった[██████]をレスザンTVよりリリースした「GROUNDCOVER.」。ヴィンテージでアナログで、それでいて最新。彼らの先鋭的なサウンドは、形を求めず現在進行形で進化を続ける。

オリジナルメンバーの Ataraw (Vox,Dubwise)を中心に、TAKUROW (Bs.)、OGNK (Gt.)にお話を伺いました!


GROUNDCOVER. インタビュー

—– バンド歴はどれ位なんですか?

Ataraw: 98年結成なので、もう21年経ちますね。

—– 21年ですか!?

Ataraw: あんまり言いたくない(笑)。

—– (笑)。バンドを結成したのはAtaraw君ですよね?

Ataraw: 19歳の学生の頃に同級生と結成して、最初のアルバムを出すまでに10年位かかってますね。

—– その当時のオリジナルメンバーは?

Ataraw: もういないです。活動を止めたことはないんですけど、メンバーは数えきれないくらい入れ替わってて。

—– 今は、ミキサーを使ってDUBWISEという立ち位置ですけど、その当時のAtaraw君の担当楽器は?

Ataraw: その当時はギターと声をやってて、エフェクターを多用したりとか鍵盤なんかを弾いてたので、一般的なギタリストっていう感じではなかったと思います。USインディーやポストロック、UK ポストパンク辺りの音には物凄く影響を受けてて。「This Heat」とか「Sonic Youth 」とかそんな音に近いバンドだったんですけど、当時は、高円寺の20000Vでライブを頻繁にやってたので、「MELTBANANA」とか「ZENIGEVA」なんかの、日本のアンダーグラウンドのオルタナバンドの洗礼を受けてたのと、一緒にバンドを立ち上げた奴も僕もテクノとかの電子音も好きだったので、自然と音も変わっていって。

—– メンバーも入れ替わりながら、音も変わっていっているわけだけど、そもそもメンバーが変わったから音を変えていったのか、それとも、割とAtaraw君の中でやりたい音が見えていて、それに対してメンバーが合わないから辞めていったのか、っていうのはすごく気になります。

Ataraw: 僕の方から、クビにしたとかは一度もないんですよ(笑)。ただ、みんなが嫌になって辞めていくってことが多いです、、、たぶん(笑)。『こういうスタンスのバンドをやりたい』っていう大枠のイメージはあるんですけど、その中でベースがいない時期もあったり。そうなった時に、ベース無しだったらこういう事をしようとか試行錯誤をしながら、音楽も変わっていって。だけど、バンドは止まらないでひたすらライブをやっているという。

—– で、今のDUBWISEスタイルが確立していった感じですか?

Ataraw: 前のアルバムを「LESS THAN TV」から出したときに、エンジニアをやってくれたのが、「SUPER DUMB」とかのDUBWISEをしている松本さんだったんですね。その時のアルバムは今みたいな感じじゃなくて。もっとショートチューンでカットアップが多いような早い変な曲の中に要素の1つとしてダブっぽい部分もあって。そのダブっぽい部分を録音するときに、松本さんがいろいろ教えてくれたんです。そのレコーディングがかなり面白くて。そのアルバムのレコ発から、ベースが加入して、僕がギターを弾かなくなってミキサーを持ち出して、パーカッションを入れたり大きな変化が現れました。

—– 今の形の原型のような?

Ataraw: そうですね。自分の中でメンバーを増やすブームでもありました(笑)。意図的に増やしていきました。

—– 結構、GROUNDCOVER.は、Ataraw君の脳内を表現してるイメージがありますが、どんな風にメンバーと共有しているんですか?

Ataraw: ほとんどの曲をがっつり僕が作り込んで、それをメンバーに渡して、それを一旦コピーして貰って、そこから試行錯誤するという作業をしていますね。その作って渡す曲って、基本、デモとして渡すというよりは、トラック物の作品を渡しているので、ギターの音とかベースの音とかは入っていないんです。なので、打ち込みで作った音を、生音でどう出すか?みたいなところから始まって、そこから足し算や引き算、差し替えをしていくんです。

—– 結構、そうなると楽器隊は苦戦するんじゃ?厳しい?(笑)

TAKUROW: 厳しいっていうか(笑)、やっぱりAtarawが一番把握しているわけだから、コピーしていってイメージと違った場合は当然指摘されるし、そこを修正していって。

Ataraw: 結構どうでもいいところはどうでも良かったりするんですけど、気になるところは気になる。

TAKUROW: えー、そこ?みたいなときはもちろんある(笑)

Ataraw: 絶妙なニュアンスの差とかはもう僕にしか分からなかったりするので(笑)。

—– TAKUROW君やOGNK君が加入してから初のレコーディングになると思うんですが、今回のアルバムは、アルバムの構想が先か、リリースに合わせて制作していったか、、どちらよりなのでしょう?

Ataraw: 前のアルバムをリリースした後に、ベースが加入した後からの音を音源化はずっとしたかったので、どちらかというと構想が先にあって。それが、、、8年前?(笑)

OGNK: すごい緩いペース(笑)。

—– 8年かかった原因などは?

Ataraw: いろいろ要因はあるんですけど、TAKUROWくんが入る前のベースがサラちゃんっていう女の子だったんですね。それで、実は、一回サラちゃんがいた頃に次のアルバムのレコーディングをしたんですけど、初日のレコーディングの翌日位に辞めたいって言われて(笑)。

—– え?(笑)

Ataraw: そうなんですよ(笑)。俺、もう滅茶滅茶怒ってましたよさすがに(笑)。

OGNK: ベースとドラムをほぼほぼ録り終えてたんだよね?

Ataraw: ほぼほぼ完了してた(笑)。

—– でも、例えば、レコーディングはその女の子のベースのまま採用してとりあえずレコーディングは終わらせちゃって、ライブとかはサポートなり新メンバーでってことも可能だったのでは?

Ataraw: あ~~。確かに。でも、そのレコーディングの時に、なんか違うな~って言うのも多々あって。結構、厳しく?っていうか、細かくいろいろとレコーディング中に言ったりしてたのもあったので、正直、自分的にもあまり納得がいっていなかったっていうのもありましたね。だったら一回白紙にして、納得いく形で出したいなっていうのもあって。

—– それが、いつ位?

TAKUROW: サラちゃんが抜けて俺が入ったから、3年前とかになるのかな?

—– ドMのベーシストを探してたっていう事ですね?(笑)

Ataraw: サラちゃん、ドMだったと思ったんだけど(笑)。

—– そもそも、メンバーを選ぶ判断基準っていうのはどんなところなのでしょう?

Ataraw: あんまりミュージシャンっぽくない人というか、全体像をみて、自分がパーツになれる人っていうのが理想にあって。ミュージシャンってプレイするのが楽しいのもあって、結構、弾きたがりだったり、叩きたがりだったり、っていう人が多いと思うんですね。僕は、それが嫌で。必要のない音を出すってすごく全体を濁すことになると思うんです。だから、そういうスタンスを面白いなって思ってくれるアーティストが好きというか、このバンドには合っていると思いますね。

—– ループ物が多いですよね?お二人はどれ位Ataraw君の脳内を理解していると思ってやっていますか?

OGNK: いい質問ですねー(笑)。

TAKUROW: どれ位って表現するのは難しいけど、まだまだ到達していないと思う。

OGNK: 俺は、自己評価では100%分かってるつもりでやってますね。分からなかったら聞くし、もし、100%じゃないって言われたら、じゃーどこが違うの?って聞くし。たぶん、実際は100%分かっていないんだろうけど、そう思ってやってないと、意見が出来ない。分かろうとしてるっていうのかな。見た目は教祖っぽいけど、崇めたらダメだっていう(笑)。

—– 飲み込まれないようにね(笑)。

OGNK: 俺は見た目は普通ですけど、精神上では対等でいたいと(笑)。

—– 今回のレコーディングは割とすんなり終わったんですか?

TAKUROW: 録りは早かったよね。

OGNK: 楽器のレコーディングに費やした日数は三日とかだったよね?一回しか演奏してない曲とかもあるし。

Ataraw: 録り自体はスムーズにいったので違和感もなく何の問題もなくて。

—– ギターとかベースの音とかは、割とミックスも見越した上で録ると思うんですけど、その辺りの音色のイメージなどは、イメージ通りだったんですか?

Ataraw: 結構、リハとかライブの時点で音色はかなり詰めているので、レコーディングの時はそのままいつもの音を出して貰いました。素材だけあれば何とかなるっていうパートは、そこまで気にはしないので、音色に関してレコーディングで苦労することはなかったですね。

—– ドラム系のベーシックのリズムの作り方は?

Ataraw: ミニマルなビートが欲しいパートは出来るだけ人間臭さは消したかったんですけど、やっぱり人間が叩いているので、ちょっとしたヅレとかは発生しちゃうんですね。ちょっと気になった部分は後で直せば良いかなって思っていたら、、物凄い編集に時間がかかりました(笑)。何曲かはキックを一個一個グリットに合わせる位ストイックに作り込んだんですけど、まー大変でしたね(笑)。

—– ミュージシャンによっては編集されるのが苦手な人もいると思うんですけど、実際、仕上がりを聴いて、うん?って思ったりは?

OGNK: 俺の場合は、完全に信頼しているので、どうにでも好きにしてくれっていう感じです。ギターの音量をもう少し欲しいな~とかいう部分はあったりもしますけど、タイミングの編集とか切った貼ったとかは全く異論無しですね。Ataraw君が書いたセルフライナーノーツに書いてあったんですけど、「キックはピッタリ合ってるのとは逆に人間っぽくヅレているのが新しい」って。俺もホントそう思うんですよね。そこがこのバンドのカッコいいところ。

—– Ataraw君、メンバーに恵まれているじゃないですか!(笑)

Ataraw: いや、ほんとそう思いますよ。

TAKUROW: 俺も、そこがカッコいいと思って加入したし。

OGNK: 実際、『そこは分かる』ってところしか編集しないから。わざわざ前ノリで弾いたギターを後ノリにしたりみたいな崩し方は絶対しないから、安心して任せられる。

—– 毎回こんな感じのレコーディングだったわけではないんですよね?

Ataraw: 今までは、ベーシック一発録りして、ボーカル重ねて、みたいな所謂パンクバンドのレコーディングだったんですけど、今回のアルバムは、初の試みではあったんですけど、こういう事前からの作り込みと、その後のミックスでの作り込みを想定して望みましたね。

—– ミックスもAtaraw君が?

Ataraw: いや、編集まで僕がやって、ミックスは阿佐ヶ谷のStudio Zotの久恒君。勿論、ミックスも一緒に付いて話し合いながら進めました。

—– それがどれ位の期間かかったんですか?

OGNK: 2年?(笑)

Ataraw: ですね(笑)。レコーディングは滅茶苦茶早かったんですけど、ミックスに物凄く時間がかかってしまって。

—– 色々と特殊なバンドみたいですね(笑)。

Ataraw: レコーディングだけじゃなくて、ライブもなんですけど、ステージ上で全員で一斉に音をストレートに出すバンドとは違って、このバンドは、一回僕のミキサーを介しているので、演奏する側も、普通にライブをやる感覚とは違ってくると思うんですね。自分の手元から離れて、第三者が弄るっていうことに快感を持っていないとそもそも出来ない。特殊ではありますね(笑)。

—– ライブなども割とアドリブなども無しでキッチリ事前に決めているんですか?

TAKUROW: ほぼほぼ決まったフレーズを弾いてますね。

Ataraw: 尺なんかも決まってはいないんですけど、アイコンタクトを入れつつもほぼ毎回一緒。ダブミックスのタイミングとかエフェクトなんかの掛け方も結構毎回同じ使い方をしているので、今後は、アドリブなんかも入れながら、どんどん変化していくライブはしてみたいなとは思ってます。

—– この間台湾でもライブしてましたよね?向こうのインディーの音楽シーンなどはどうでした?

Ataraw: 面白かったですよ。台北で一本、高雄でライブサーキットみたいなイベントに出演したんですけど、台北の会場は2マンで、その対バンが、1人でターンテーブルとAbletonか何かを使ってライブをやってて。そのライブをブッキングしてくれた人が言うには、日本と同じようにトラックメーカーとかマシンライブをやるアーティストが多くなってる、って話でしたね。

—– 日本のアーティストの影響も受けているって話は聞いたことあります。

Ataraw: 10年位前に行ったときは、それこそ、「SUPER CAR」みたいなバンドがいたり、エレクトロ、オルタナ系も多かった気がしますね。

—– バンドの方向性としては、海外にも目を向けてる?というより、海外のフェスとかに出たら注目されそうですよね。

Ataraw: 海外はもちろん意識してます。でも、日本でなんでこんな受けが悪いのか、、(笑)。

—– 海外の変態を相手にするしかないんじゃ、、、。

Ataraw: 世界の変態を集めて(笑)。まじめな話、来年は海外に行きたいなとは思ってます。海外とはいえ、どこに受け皿があるか分からないっていうのはありますが(笑)。

—– 確かに、似たようなバンドは海外でも少ないかも。「GROUNDCOVER.」を言葉で説明したらどういう表現になりますか?

OGNK: 一言で表すのが難しいとは思うんですよね。でも、ダブという形式を取っているバンドっていうのが一番近いかな。実際見て貰って、全然違うじゃん!って言われるかもしれないですけど、入り口としてダブっていうキーワードを持っているバンドだと思う。

Ataraw: ダブって物凄くキャッチーな要素だと思っていて、中身がアバンギャルドだったりノイズだったりしても、ダブの要素を入るだけで、もう少し聴きやすくなる。今回のレコーディングで特にダブっていう可能性をすごく感じましたね。

—– もう次のアルバムの構想とかあるんじゃないんですか?

Ataraw: 実は、来年早々位からもうアルバムの曲はやりたくないなって思ってて(笑)。今までのライブの経験から、ライブで新しいことをやっていく中で、理解が高まって発展していくっていう感触があるので、ライブを重ねて色々試して、また次の音源を制作したいなとは思ってます。

—– あ、最後に。ずっと気になって聞きたかったんですけど、あのアルバムのタイトルの意味は?

Ataraw: 最後に来ましたね(笑)。色々な諸事情で、曲名が使えなくなり急遽黒塗りになった、、、という事だけお伝しておきましょうか(笑)。

OGNK: フライヤーが出来上がった後に、そういう事情を知ったので、みんなでフライヤーのタイトルを500枚位黒塗りした思い出だけが残っていますね(笑)。

—– ちなみに読み方は?

Ataraw: 黒塗り(笑)。

—– Weezerのブルーアルバムっぽくてカッコいい(笑)。

Ataraw: メタリカのブラックアルバムのノリですね(笑)。

—– 消しゴムで消せるか試した人、絶対いますよね!(笑)


Interviewed by Kenichi Kono

リリース情報

GROUNDCOVER.[██████]


GROUNDCOVER.
[ ██████ ] 2019.08.07 Release

01.Intro
02.Slash and Mash (Ananke)
03.ABYSS
04.io
05.Leda
06.LOVE
07.MY DUB (Album Version)
08.Skulls
09.Leda (O.N.O Remix)

GROUNDCOVER.
ATARAW
ENDO
OGNK
MONDEN
KONB
TAKUROW

Additional artist
YUI MAKI (NNNI) : Live VJ, Video Art.
DEE LEE (NNNI) : Live VJ, Video Art, Vocals and Lyrics of #7 MY DUB & #8 Skulls.
All Music Produced by GROUNDCOVER.
Directed by Noriaki Honma (Less Than TV)
Recorded & Mixed by Ryo Hisatsune (Sutudio Zot)
Mastered by O.N.O (THA BLUE HERB)
Art Work by ATARAW
Designed by MAKI(NNNI)


GROUNDCOVER.

GROUNDCOVER.

Atarawを中心に結成されたエクスペリメンタルミュージックグループ。

これまでに1st Album「OVACHE EePii」、LessThanTVより2nd Album「PSYCHO BASS」とSiNE、THE DEAD PAN SPEAKERSと共に3way Split 7"シリーズをリリース。

数回の海外公演の他、変容し続ける音楽スタイルの中でダブ/ベースミュ-ジックへの接近も試み、GOTH TRADがオーガナイズする日本が誇るアンダーグラウンドベースミュージックパーティー「BACK TO CHILL」への出演も果たしている。

Official Website
https://www.grndcvr.info/


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