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春ねむり『bang』MUSIC VIDEO

[2021/01/17]

春ねむり、ロサンゼルスで憂鬱を撃ち鳴らす!「bang」MV公開

春ねむりが1月15日(金)にデジタルリリースした「bang」のミュージック・ビデオをYouTubeで公開した。

今作はロサンゼルスと東京の2箇所で制作され、東京のHAPPYCAT RECORDINGSにて録音、それ以外はすべてロサンゼルスで行われた。ミックスエンジニアはTreehaus Recordingのジャスティン・ガリアーノとダスティ・シャーラー。マスタリングはMarsh Masteringのステファン・マーシュが手がけた。

春ねむりは、昨年3月より予定していた北米ツアーをすべて延期中だが、ツアー時に行う予定であった「bang」のミュージック・ビデオ撮影をオンラインで決行。

人類の歴史的災厄となったCOVID-19により人の減ったロサンゼルスの街に、その鬱屈した行き場のない衝動を全身で体現しパフォーマンスをする春ねむりの姿が映し出されている。

本ビデオは、アメリカでの撮影を日本からリモートでディレクションし、国内スタッフが現地へ行かずに企画・打ち合わせから編集まですべてをオンラインで敢行。ダウンタウンを中心に全米で最も危険なストリート「スキッド・ロウ(Skid Row)」やハリウッドで撮影が行われた。

最後には怒りながらも、考えるという営みにより生まれるであろう見えない自由を、絶望しながらも信じる春ねむりの表情が垣間見える。

そして、春ねむりは同曲についてのステートメントも発表した。内容は以下の通り。

4年前アメリカで「ドナルド・トランプ大統領」という存在が誕生してしまったとき、わたしはお風呂で少し泣いた。ドナルド・トランプという人間の社会的ペルソナは、資本主義と個人主義がその理想を挫かれ行き詰まっているこの社会において、数字として最大限そのパフォーマンスを発揮するために必要なふるまいを理解していて、差別的かつ排外主義的な態度を繰り返すことによって、それが「強さ」や「強者らしさ」であるかのようにたくさんの人間に思い込ませることに成功した。わたしは、その本質的ではない「強さ」を支持せざるを得なくなってしまった人間がたくさん居るということが悲しかった。

ドナルド・トランプが大統領就任期間においてだけではなくその人生において繰り返してきたような手段を、実にさまざまな人間が使用してきた結果として、世界は、わたしたちは、分断を深められ続けている。ひとりひとりが感じることや考えることが違って、いくら言葉を交わしたとして完全に理解し合うということが不可能な生物であるところの人間が、深まっていく分断に抵抗するすべはたったひとつだ。それは、それでも対話をすることである。「わたしたちは完全にわかりあうことができない」という前提の上で、いまたしかに存在しているはずの誰かの悲しみや怒り、痛みを想像し、この社会をお互いの手でつくりあげていくために、わたしたちは対話し、断続的に思考をアップデートし続ける必要がある。

その対話という営みは、営為者に高い負担を強いることが往々にしてある。答えがないことがらを、価値観や世界観の違った人間同士で話し合うのだから、その話者の感受性や育ってきたバックグラウンドによってはこじれてしまうことも多いし、その場合それをフラットな議論の場に戻す作業を繰り返す必要がある。その間お互いがお互いを馬鹿にせず蔑まず、自分の感情や論理を理性的に表現しながら、「答えがありませんね。妥協点としてここをいまは結論としておきましょう。」と言える範囲までにもっていくということである。この過程は非常にエネルギーを消費するし、苦痛であると感じる人間は少なくないであろうと思う。

わたし自身も、この営みに真摯に取り組もうとするとき、大変なエネルギーを消費する。そして、そのやりとりのなかで磨耗していく精神に耐え切ることができない自分の未熟さによって、アカデミックな知識を絶対的な正義のように振りかざし、他人を傷つけてしまうことや、相手が対話に臨もうとする心すらも殺してしまう結果につながることがある、と感じたときがある。そういうわたしにとって音楽をつくるということは、本質から外れにくく、また、時空間を超える、魂による対話の方法だ。そしてわたしがそう感じるのは、対話という営みの根幹にあるものと、音楽をつくるという営みの根幹にあるものが、わたしにとっては共通のものであるからである。

そこにあるのは端的に「祈り」である。それ以外にはなにもないと言ってもよい。生きていくそのなかで、わたしたちは解消することのできない痛みをもつことがある。宗教や人種、性別、血縁や国籍といったものが確固たるアイデンティティを完全に形成することがなくなってきた現代、祈る対象を失いつつあるわたしたちの社会において、それでも「祈り」そのものにわたしは希望を見出している。

助けてくださいとも、世界を終わらせてくださいとも、わたしは祈らない。わかりあえないと知っていて、散々思い知っていて、それでもこの星のあらゆるひとと、生命と、生きていくことができますように、と祈る。そこに神さまや誰か、その祈りを受容してくれる対象は存在しない。それはほんとうにただそこにあるだけの祈りである。

社会構造によって差別されている人間がいると、もつべき自由をもたない人間がいると、知性がやさしさではない世界が在ると、虐げられている子どもがいると、自分の痛みを痛みだと泣くことすら許されない人間がいると、そう知った瞬間に、わたしは新しくうまれたのだ、といつも思う。そして、この星の痛みを知るたびに、その痛みを抱きしめるために対話をするたびに、そこにある祈りをたしかめるたびに、わたしはいつでも新しくうまれるのである。わたしが新しくうまれるたび、世界もまた新しくうまれる。その瞬間の音が、これを読むあなたにも響くのかどうかはわからない。けれども、もしもこの音楽のなかに、なにかを見出し獲得してくれることがあるのならば、そのときあなたは、あなた自身があなた自身によって、新しく生まれる音を聞くだろう。それは、音楽というフィールドで、わたしたちの対話がはじまる、かけがえのない瞬間である。そこに生まれる未来の可能性こそが、わたしたちの分断に対抗するひとつの手段であると、わたしは信じて生きていく。

春ねむり


リリース情報

春ねむり - New Single『bang』Release



春ねむり
『bang』
2021.01.15 Release

-収録曲-
01. bang

フォーマット:デジタル


春ねむり

春ねむり

横浜出身のシンガーソングライター/ポエトリーラッパー。
2016年、うたう最終兵器「春ねむり」としてデビュー。自身で全楽曲の作詞・作曲を担当する。
2017年、ミニアルバム「アトム・ハート・マザー」をリリースし、「タワレコメン」へ選出。夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」出演の他、映画「; the eternal /spring」の主題歌を担当、資生堂の医薬品リップクリーム「モアリップ」のWeb CMに出演等、様々な分野で活動の幅を広げる。
2018年、1stフルアルバム「春と修羅」をリリース。ストリーミング再生回数は既に700万再生を超える。アメリカ最大の音楽評価サイト“RATE YOUR MUSIC”で2018年のアルバム作品として世界30位、”AOTY (Album of The Year)”で世界20位にランクイン。これは日本人のアーティストとしての最高位となる。

2019年、マレーシア・台湾の大型ロックフェスへ出演し、3月からは香港・上海・北京・台湾・日本と、アジア全5ヵ所を回るツアーを開催。6月にはヨーロッパを代表する20万人級の巨大フェス「Primavera Sound」に出演のほか、6ヵ国15公演のヨーロッパツアーを開催し、多数の公演がソールドアウトと大盛況で幕を閉じる。
2020年1月、「ファンファーレ」 3月、「Riot」を立て続けにリリース。そして2年ぶりとなるオリジナルアルバム 「LOVETHEISM」を完成させ、全3本をマイナス30度という極寒のロシアで撮影したミュージック・ビデオと共に海外リスナーからポジティブな反応が続出。6月にはフランスのレーベルより新作アルバムのアナログ盤リリース、カンヌで開催された世界各国の新進気鋭のアーティストを紹介する『Midemタレント・エクスポーター』に日本人として初選出。

2021年3月には自身初となる 北米ツアーの開催が決定。ブルックリン、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコの北米全4都市での公演を行う。
これが新世代のジェイポップ、こころはロックンロール。

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