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水戸部七絵 個展『Rock is Dead』2021年6月24日(木)~7月11日(日)at biscuit gallery

[2021/06/07]
水戸部七絵 個展『Rock is Dead』2021年6月24日(木)~7月11日(日)at biscuit gallery

水戸部七絵《Sexy Rock Alien》 2mx2m Oil painting,linen,pigment,wood panel 2021


水戸部七絵がbiscuit gallery 3フロアにわたる初の個展「Rock is Dead」開催~「DEPTH」シリーズに加え、新作ポートレートシリーズの大型作品を展示。

渋谷区松涛文化ストリートに構える現代アートのコマーシャルギャラリーbiscuit gallery(渋谷区 松濤)では、6月24日(木)~7月11日(日)、画家、水戸部七絵の個展「Rock is Dead」を開催致します。

「Rock」というカルチャーは、退屈で窮屈な世の中を打破するエネルギーの象徴として、20世紀に鮮烈な光を残してきました。 声なき声の代弁者、時代に唾を吐くアナーキスト、時代を変えて行く革命者として、その時代を生きる若者たちを魅了し、リードしてきたロックスター。 しかし時代の変化とともに商業化し、スターダムに押し上げられた存在はスターという商品として消費され、思想は形骸化し、スタイルのみが残って行きます。 こうした羨望と失望の中で、「Rock is Dead」という言葉が飛び交いました。

挑発的で攻撃的な音楽性、きらびやかなスタイル、力強いメッセージの他方で、その存在は偶像化され、商品として消費されていくこととなっていった歴史があります。 そして、ロックスターたちは偶像化された自己と、実態としての自己との狭間で、矛盾と葛藤を抱えながら歌い続けてきました。 水戸部は、こうした時代のアイドルたちの姿に、消費と表現というアートという世界を生きる上で向き合わなければならない二律背反を、重ねながら新作の制作を続けてきました。 資本主義の限界を指摘される時代を迎えながらも、それでも肥大化するアートマーケット。 それと迎合しながら形骸化し、デフォルメされていくアート。 この状況に幻滅したとしても、資本の原理を無視することはできないことは、周知の通りです。 そのことを十二分に理解しながらも、水戸部はこうした状況を打ち砕くように絵の具を塗り込めて行いきました。 彼女は、「Art is Dead」という言葉を想いながら、「Rock Star」を描いて行いったのです。

本展覧会では、音楽・ファッション・映画などを横断しながらグラムロックシーンの象徴となったディビッド・ボウイ、挑発的な姿で保守的な女性像を破壊していった女性ロックバンドのザ・ランウェイズなど、70年代のスターを描いた作品を発表します。 ポップで、カラフルで、主義も主張もない当たり障りのないインテリアがアートとしてマーケットを騒がす時代。 そんな状況に対して、矛盾と葛藤の中で生きてきたスターたちを描くことで、商品としての絵画を打破していこうという試みです。 効率や扱いやすさを無視して貫いてきた超厚塗りという水戸部のスタイルで描かられたロックスターたちは、鮮烈な絵の具の匂いを放ち、その重量と質量をまといながら、今日のアートにアンチテーゼを投げかけています。


水戸部七絵 個展『Rock is Dead』

【日程】
2021年6月24日(木)~7月11日(日)
13:00~19:00(土日:12:00~18:00)

【展覧会構成】
本展は3フロアにわたり構成されます。

1階フロア:Star Portrait シリーズ
2階フロア:Star Portrait シリーズ

3階フロア:depth シリーズ

2m級の大作から小作品まで、幅広いラインアップで構成される展示を予定しております。

【会場】
biscuit gallery 1階~3階
(東京都渋谷区松濤1−28−8 biscuitビル)

【URL】
https://biscuitgallery.com/nanaemitobe-rockisdead/

※新型コロナウイルス感染予防ご協力のお願い
マスクの着用と、ギャラリー入り口にて手指のアルコール消毒をお願い致します。 また、入店時に非接触の体温計にて体温測定をお願いしております。

水戸部七絵《Sexy Rock Alien》 2mx2m Oil painting,linen,pigment,wood panel 2021

水戸部七絵《All-girl Rock Band Sings in》 Lingerie 1.5m x 1m Oil painting,linen,wood panel 2021


Rock is Dead/アートが美しさを失う時、そのアンチテーゼとして
山峰潤也(キュレーター)

自分の中でひとつ決めていたことがある。 それは絵画について語らないこと。

映像や写真を主戦場としてきた自分は美術というフィールドにおいて、所詮は亜流の存在であって、その本流である絵画は聖域であって、自分が踏み込むべきではないと思ってきた。 むしろ、そうすることで本流に対するカウンターパートとして立身することで、その特異性を自負してきたという感覚さえあったかもしれない。 もしくは、美術にまつわるあらゆる制度が絵画を軸に形成されていることを、この世界で生きていく中でまざまざと見せつけられてきたことによる、卑屈さの所以かもしれない。 まあ、いずれにしても、絵画という存在を直視することを避けてきたことは間違えない。 水戸部七絵という画家と出会ったのはそんな只中にいたころだ。

ミュゼ浜口陽三で初めて見た水戸部の作品は、絵画という領域を逸脱した物量で、それは図像学的には感得することのできないただならぬ存在感を放っていた。 むしろそれは絵画というより彫刻に近い量感。 だが、水戸部はそれを頑なに絵画と呼んだ。 言葉足らずで愛嬌のある水戸部本人の印象とは裏腹に、徹底的な絵画至上主義。 そして頑固。 その執着と、作品から醸し出される異様な圧力。 それが脳裏に焼き付きながらも、映像言語とそのレトリックを駆使し、見るものの心象を操る文脈主義の世界にいた自分とは相入れないと思っていた。 しかし、それはアウラなき複製技術時代の芸術の中でもがいていた自分の中で芽生えた、圧倒的なアウラへの嫉妬。 そして、それゆえの遮断。 今となってはそうだったのではないかと思う。 ただ、水戸部もまた、アウラへの信頼を忘れ、コンテクストを巧みにマージしたレトリックを至上とする現代美術の中でもがいていた。 しかし、彼女にとっての唯一無二の武器は、圧倒的な物量と油絵の匂い、そしてその存在感から“絵画がそこに在る”ことの迫力を現前させることに他ならない。 荒唐無稽なまでに一本やりで不器用。 だが、それを徹底的に突き詰めていった先に、水戸部という画家の本質と魅力があることに気づかされることとなる。

水戸部はなぜか、全く正反対にいるはずの私のトークやイベントによく顔を出し、熱心に話を聞いた。 その流れで、アドバイスを求められた。 絵画に対してコメントを求められる機会が少なかった私はかなり困惑していたと思う。 ただそこでは、いかに作品が素晴らしくとも、現代の情報流通の経路では、平面的な画像が与える図像的印象と、作品が纏う物語、そして既存の文脈と接続するための引っ掛かりについて話したのではないか。 おそらくそんな上っ面なセオリーを話したように思う。 だが、改めて水戸部のアトリエでその作品群を見た時、自分の知る文法とは全く異なる価値観で構築された作品に、自分の浅はかさを改めさせられた。 マイケル・ジャクソンやデヴィッド・ボウイなど、水戸部自身が惹かれた人物と対話しながら幾層にも重ねられた絵の具が放つ存在感は、言葉よりも饒舌に話しかけてくる。 概念的に、ロゴス的に、(要するに頭でっかちに)美術を捉えようとしてきた自分にとっては衝撃的で、美術のひとつの本質的な側面に出会い直した。

そういう感覚を与えてくれた水戸部が今回選んだ主題が『Rock is Dead』である。 おそらくそれは「Art is Dead」と叫びたい彼女自身の声を、時代に抗い、その摩擦と衝突から生まれる輝きから時代に煌いたロックスターたちに重ねたからだろう。 その気持ちは痛いほどわかる。 ゴッホの『ひまわり』を見た時、絵画が輝いて見えたという水戸部。 彼女には、マーケットに迎合し、軽薄で当てに行く感じの作品が“アート”として流入してきたこの世界を、もはや輝いているとは思えなくなってきたのであろう。 そこには共感する。 彼女と私が美しいと感じてきたものはそれぞれ異なるが、輝いて見える芸術が追いやられ、スタイルと様式のみをなぞっただけのものが本流のように振る舞うことには耐えられない。 私にとって、作品が美しいのは、そこに作り手の切なる叫びが込められているからである。 作品そのものと、作り手の叫びが重なり、共鳴することで、芸術が芸術たり得る。 それが失われつつあるならば、アートは形骸化したロックの末路とも等しい。

かつては、美しいものを芸術と呼んだ。 しかし、そうとは思えないものまでもが、アートと呼ばれる昨今の状況がある。 そして、それを打ち破りたいと願う水戸部のアンチテーゼが作品には込められている。 表層的な技術やスタイルを踏襲したものは、メディア受けし、扱いやすく、商品化しやすい。 そこに経済原理が追随し、そういうものを支持するパワーが大きくなる。 しかし、そうなればなるほど、美術が培ってきた本質的で、多様で、奥深く、時には不安や怖さを駆り立てるような力に魅了されていた人たちが、ものを申すことができなくなる。 今はまさにそんな時代に差し掛かっている。 しかし、そういう時代の中でも自身の表現を貫こうとする人間の葛藤から美しさが生まれると信じたい。 そして、そこから生み出される作品にこそ、現状打破する一縷の希みをかけたいものである。 その、もがきから生まれる煌めきを纏う存在こそが芸術家たり得る。 水戸部はその道を目指して歩いてきた。 そして、今回また新しい段階へ踏み込むための扉を開かんとしているのだと直感している。 なぜなら水戸部の作品の厚みには、彼女の切なる叫びが込められているから。


水戸部七絵 Nanae Mitobe

水戸部七絵 Nanae Mitobe


神奈川県生まれ。 現在は、千葉を拠点に活動。 2021年、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画に在籍、小林正人に師事する。 代表作にマイケル・ジャクソンなどの著名人やポップ・アイコンをモチーフにした「スター・シリーズ」や、14年のアメリカ滞在をきっかけに制作された匿名の顔を描いた「DEPTH シリーズ」などがある。 20年には「VOCA展2021」奨励賞を受賞(鎮西芳美 推薦)、愛知県美術館に「I am a yellow」(2019年制作)が収蔵される。

アーティストコメント

2016年にDAVID BOWIEの訃報を聞き、翌年に日本で開催された大回顧展を観に行きました。 とても興奮する展覧会でしたが、私の中にいるデヴィッド・ボウイは完璧に美しく、私は絵に描くことができませんでした。 そして、あっという間に数年が経ち、日本のアートシーンにも大きく変化があり、私が信仰してきた芸術の思想にも影響がありました。 美しさに対する疑念の中で、彼の「僕は宇宙人だ!」という強いメッセージに、美しさを超越した固有の存在であること、私は彼の存在に救われたのでした。


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