Kan Sano インタビュー
Profile of |Kan Sano|
キーボーディスト、トラックメイカー、プロデューサーとして多方面で活躍、様々なアーティストとの共演も果たしてきたKan Sanoが約3年ぶりとなるニューアルバム『k is s』をリリース。幅広い音楽性を示し続ける中で、基盤となった自身のルーツ、多忙を極めた今年を振り返ると共に、さらなる躍進を予感する今作について語ってもらった。
Kan Sano Interview
—–印象としては、今年1年かなり忙しかったんじゃないですか?
そうですね。ここ数年で色々なアーティストのツアーに参加させてもらったりとか、共演させてもらう機会が増えて、今年もUAさんのツアーをやりながら、Charaさんのツアーをやったりとか、夏フェスに出たりとか、特に夏はバタバタでしたね。
—–よくスケジュール調整できましたね。
ほんとに気合で乗り切ったって感じでしたね(笑)
—–UAさん、Charaさん、もちろんご自身のソロもそうだし、あと藤原さくらさんのツアーなんかもありましたよね。
藤原さくらさんのツアーはうまい事被らなかったんですけど、でもフェスによっては、ライジングサンとか初日UAさんで出て、2日目は藤原さくらさんで出てっていうのはありましたね。
—–フジロックも3ステージとか出演されてましたもんね。
はい、そうでしたね。そういう事をやりながら新しいアルバムを作っていたんですよね(笑)
—–いったいいつ作っていたんだって感じですよね(笑)
そうですね(笑)
—–ツアー先とかでも作業されたりしていたんですか?
ツアー先で作ったりっていうのはなかなかないですね。ほんとに時間をみつけて自宅でやってましたね。
—–その中で年内にリリースっていうのは結構前から決めていたんですか?
いや、制作には2年ほどかかったんですけど、今年の夏位に曲が一通り出揃って、僕的にもレーベル的にも準備が整ったので、そこで年内間に合うかもねって感じでしたね。
—–スケジュール的な事以外で大変だった事って何かありますか?
やっぱり2年も時間を掛けたのが今回初めてだったんですけど、色々な事情で時間がかかってしまったんですけど、アルバムを作る時っていつも完全に制作モードに入って進めていくので、結構体力的にも精神的にも疲れるし、ずっと緊張が続いたままなんですよね。その緊張の糸が張ったまま2年間過ごしていたので、そういう面では結構大変でしたね。
—–そういった緊張の中で間をみつけてって感じだったんですね。
結局ツアーに出ても何しててもずっとアルバムの事が頭の中に引っかかっているので、とにかくこれを完成させないと次に進めないなって感じでしたね。それをやっと無事終えて今はほっとしています。
—–ライブと制作でのテンションの切り替えというか、それぞれにスイッチ入れる部分はうまくコントロールできていたんですよね。
やっぱりライブをやると、そこの会場でお客さん達からもらうエネルギーっていうのが凄くあるので、それがUAさんとかCharaさんとかになると何千人の前で演奏するので、そのエネルギーって凄いんですよね。そこでもらったものが自然と自分の作品にも反映されていったし、なんかそうやって、エネルギーの循環じゃないですけど、会場でもらったエネルギーでまた僕は作品を作って、それをまたみんなに届けていく事で、僕は音を返すと書いて『音返し(おんがえし)』と呼んでいるんですけど、その音返しができれば良いなと思っています。
—–そんなこんなで完成した今作ですが、タイトルが『k is s』という事で、半角スペースを入れるあたりなかなか思わせぶりですよね。
これは、そんなに深い意味はないんですけど(笑)。kissって言葉が改めて良い言葉だなと思って、使い古された言葉ではあるけども、なんていうか、ほんとにニックネームとか友達を呼ぶような感じで呼びやすくて短いタイトルにしたかったんですよ。それでkissって書いてみたらk is sって分解できることに気が付いて、それで僕のイニシャルはK.Sなのでちょうど良いなと思って決めました。
—–作風というか音の部分でいうとジャズっていうのがご自身としては根底にある感じなのですか?
ジャズっていうかブラックミュージック全般ですね。ジャズとかソウルとかネオソウルとか、そういったものを10代の頃からずっと聴いてきて、やっぱり10代で聴いた音楽っていうのはその後ずっと影響してくるので、なんか今回はそういった自分の中でベースとなっているブラックミュージックがわりとアルバムに反映されましたね。
—–今作でそのブラックミュージックが反映されている部分というのは、意識的にそういう風に持っていった感じですか?それとも制作してみたら自然とそうなっていたって感じですか?
今回はわりと意識していましたね。ずっとブラックミュージックを聴いてきて、自分は日本人だから、黒人でもアメリカ人でもないけど、なんかずっと自分なりに聴いて培ってきたものがあって、それをやってみたいと思ったんですよね。
—–10代からっていうのは、もう小学生の時とかからそういった音楽を聴いていたんですか?
小学生とか音楽を聴き始めた頃はビートルズとか当時流行っていたJ-POP、ミスチルとかを聴いていたんですけど、10代後半の高校位からですね。スティーヴィー・ワンダーとかから入って、ジェームス・ブラウン、マーヴィン・ゲイ、マイルス・デイヴィスとか、そういった音楽を色々聴くようになっていったのは。
—–その頃はキーボードというか、鍵盤はもう始められていたのですか?
弾いてましたね。高校の頃から大学のジャズ研の人達とセッションしたり、ライブをやったりしていましたね。
—–元々幼少期にピアノを習っていたわけではないのですか?
習ってはいないんですよね。
—–何か始めたきっかけはあったのですか?
それまでは音楽に全く興味が無くて、音楽の授業で歌うのも嫌だったし、家にピアノがあったんですけど、全然弾こうとはしていなかったんですよね。ただ、ミスチルとかそういう当時流行っていたJ-POPを聴くようになって、自分でもやってみたいと思うようになったんですよね。なんていうか、聴くようになって見よう見まねで。
—–いくつ位の頃ですか?
小学校5年とか6年とかですね。
—–無理やり習わされたとかじゃなくて、自我が芽生えて率先してだから伸び伸びとって感じですね。
そうですね、自分から始めた事なので。
—–でもご自宅にピアノがあったという事はご家族のどなたかがやられていたんですよね?
そうですね、妹がピアノを習ってました。実家には他にもフォークギターとかもあって、そういうのを触ったりしていましたね。
—–当時から将来は音楽でやっていこうみたいな意識はあったのですか?
それはもう結構早い段階からそうでしたね。小学校の卒業アルバムに「将来はミュージシャンになる」って書いてあったので。
—–それで、大学はバークリー音楽大学の方に行かれたわけですが、結構日本から行かれる方も増えているんですよね?
そうですね、僕が行っていた頃は日本人がすごく多かったですね。
—–バークリーって実際どんな感じの所なんですか?
ジャズを主に勉強する学校なので、ほんとにアメリカに限らず世界中から生徒が集まるんですよね。だからすごくインターナショナルですね。
—–授業とかは厳しいんですか?
いや、授業はそんなに厳しくはないですね。教えている講師たちもジャズマンですから、授業うんぬんというより、そういう講師や生徒も含めて、素晴らしいミュージシャンが周りにいっぱいいるので、そういう環境にいたっていうのがやっぱり大きかったですね。
—–卒業してからの活動自体はずっと日本でされている感じなんですか?
そうですね、留学が終わって帰国して2006年からやっているので今年で10年になりますね。
—–今現在、ご自身のソロワークの他に先ほどからお話しされていた他のアーティストのサポートやトラックメイクなども含めて色々お仕事をされていると思うのですが、そういった音楽を職業としてもやっていけるなっていう手応えみたいなのはいつ位から得た感じですか?
それはほんとここ数年ですね。ちょっとホテルのラウンジとか六本木のバーとかでピアノを弾くアルバイトみたいな事は上京してすぐの頃はよくやってましたけど、そういうのをやらず、今みたいな体制になったのはここ数年の事ですね。
—–何か分岐点というか、きっかけみたいな事ってあったのですか?
やっぱりCharaさんのツアーに参加したのが、そういったメジャー・アーティストのツアーに参加したのが初めてだったので、そこは転機になったかも知れないですね。それまで自分がやっていたライブと会場の規模も違ったし、そういうライブを経験できた事で自分自身成長できたし、ミュージシャンとしても変わっていくきっかけになったと思いますね。
—–そこからここ数年でほんとに色々な方と共演している印象があります。ちょっと話を今作の事に戻しまして、今作ではフィーチャリングの方が4名。それぞれにムードと個性のある方々だと思うのですが、Kan Sanoさんから見て、この方々に共通している点って何かあったりしますか?
なんでしょうね、みんなほんとにバラバラですし、曲作りの進め方も違ったんですけど、やっぱりみんな自分の世界をしっかり持っているし、1フレーズ歌った時にこの人だっていうのが分かる人達なので、それでキャラクターもしっかり持っている人達だから、それをどうやって引き立たせるかって事を考えれば良かったので、そういう意味では料理はしやすかったですよね。
—–今回はアルバムのテーマを受けてこの4名と一緒にやる流れになったのですか?
いや、お願いしている段階ではそこまで決まってなかったんですよね。今回実はボツにしている曲が結構あって、最初はもっとポップよりの曲もあったし、もっとアングラなクラブ寄りの曲もあって、僕自身が幅広く色々なジャンルに手を出しているので、自分のどこを切り取るかによって見え方がだいぶ変わってくるので、どこにフォーカスをして、どういうバランスでいくのかっていうのが今回アルバムを作っていても一番難しい所ではあったんですよね。
—–そこでさっきおっしゃっていたブラックミュージックというのが基軸になっていったんですね。
そうですね。でも一番きっかけになったのは七尾旅人さんが歌ってくれた『C’est la vie』という曲ができた時に、あの曲のバランス感というのがすごくしっくりきて、ポップさと、ソウルフルな感じと、そのビート感だったり、生っぽさだったり、アーバンな感じだったり、そういった色々なバランスが自分の中でしっくり来て、これだったら、アルバムになるなっていう手応えを感じましたね。
—–色々の動きを見ていると、所属のorigami PRODUCTIONSとは単にアーティストとレーベルというものを超えた関係性を伺う事もできますね。
うちはアーティストとスタッフが運命共同体のような感じでやってるので、自分より若いスタッフも多いんですけど、彼らもどんどん成長しているし、自分自身も彼らと仕事させてもらう事で成長させてもらっているし、そうやってお互いを高めあっていける存在ですね。
—–この後は、このアルバムを引き下げてライブを行っていくような流れになっていくのでしょうか?
そうですね、年明けて3月3日に代官山LOOPでリリースパーティーをやるんですけど、今回初の試みとして、360度ライブっていうのをやろうと思っていて、客席の真ん中にステージを作って、お客さんに囲まれながら演奏するっていうのをずっとやってみたかったので、それをやってみようかなと。
—–それは音も360度から出る感じになるのですか?
どうなるんでしょうね。やっぱりステージからの配置の方が音響的には良いのかも知れないですけど、そこら辺もチャレンジしてみたいですね。それで、それをやった後に全国ツアーを今計画中なので、3月位から色々周って行くと思います。
—–来年も忙しくなりそうですね。
そうですね、夏になるとまた他の方のツアーや夏フェスなんかもあると思うので。
—–大きいイベントとか入ってくる事を考えると少しでも余裕持ってスケジュール組めると良いですよね。そういえば今年フランスでのライブも行ってましたよね。ああいったオファーって結構余裕持って来るんですか?
そうですね、フランスはだいぶ前から決まってましたね。一昨年もHEXってバンドでそのフランスのWorld Wide Festivalっていうイベントに出させてもらって、今回は2回目だったんですけど、今回はソロでの出演だったので、前回とは違う緊張感だったり、背負っているものがあって、大袈裟な言い方ですけど、日本を代表してステージに立つような感覚もあって、なんかスペシャルなライブになりましたね。
—–ライブをやってみて、実際に向こうからの反応、反響はどうですか?
フランスのフェスはほんとに独特で、会場の雰囲気がとにかく良かったんですよね。それで、何か新しい事をやろうとしている自分を完全に受け入れてくれる態勢が出来ていたし、向こうもみんなそういうものを欲していたんで、すごくクリエイティヴな空間だったし、ステージの後ろにはずっと海が広がっていて、ちょうど夕陽が沈む頃にライブをやったんですけど、そのロケーションも最高で、なんかすごいピースな雰囲気だったんですよね。
—–話を伺っているだけで雰囲気の良さが伝わってきますね。
それで客席に須永辰緒さんがいたんですけど、もう号泣していて、その須永さんを見て僕もうるっときちゃいましたね。ほんと忘れられないライブですね。
—–色々な面で貴重な体験ですね。その他、今年振り返って印象に残っている事って何かありますか?
もちろんそのフランスでのライブは大きかったんですけど、その翌週に藤原さくらさんのサポートでMステ(ミュージックステーション)に出たんですよ。ミュージックステーションにまさか自分が出る事になるとはと思ってなかったので、その振れ幅の広さみたいなものが楽しかったですね(笑)
—–なかなか異空間というか日常とはちょっと違った部分ですもんね。ご自身で放送見ましたか?
はい、録画して見ましたよ。なんかまあ楽しいですよね。
—–なんかそういった部分も含めて、今後やってみたい事とか行ってみたい所とかありますか?
早くツアーをやりたいですね。ツアーをやって色々な場所でたくさんの人からもらったエネルギーをまた次の作品に還元していきたいですし、そういうライブを通して、自分自身もっと成長していきたいですし、少しづつ変化して成長して行けると思うので、それを次の作品に繋げていけたら良いなと思います。
後は、最近バンドがやりたくて、ずっと一人で活動してきたので、バンドに対する憧れっていうのが強くて、最近SuchmosとかD.A.N.とか下の世代からどんどん面白いバンドが出てきているんで、僕らの世代でもなんか面白い事がやれたらなっていつも思っていますね。
車一台にメンバー全員乗り合わせて全国周るみたいなのは楽しそうで憧れますね。
—–それは是非なんらかの形で実現して頂きたいですね。
では、最後にこれを見ている方に、今作の見どころなど含め、何かメッセージはございますでしょうか。
この数年、色々な場所で演奏して、そこで出会ったたくさんの人達への恩返し(音返し)のような作品になっているので、是非皆さんに聴いて頂きたいですし、まだ出会ってない人達にもこのアルバムを持ってツアーに出て届けていきたいですね。
—–どういう人に聴いてもらいたいとかありますか?新たな層とか。
いや、どなたでも(笑)。でもやっぱり自分と同じ世代とか自分より下の世代の人達に届けていきたいですね。ジャンルの事はよく解らないんですけど、自分のやっている音楽がアーバンソウルのようなものだとしたら、その源流を辿っていくと日本では山下達郎さんとかがいて、そういう人達からもらったバトンを次の世代に渡して行くっていうのも自分の役目なのかなって思うので、下の世代の人達にもどんどん聴いてもらいたいですね。
リリース情報
メジャーとアンダーグラウンド 日本と世界 ポップネスとアバンギャルド
ソロピアニスト であり トラックメイカー 対極にある様々な要素を全て取り込む懐の広さ…
全ての断片を集め組み立てた”モンタージュ”。
2016 年の Kan Sano がここに完成!
ベニー・シングス、MONDAY満ちるなど国内外の豪華ゲストを迎えた2014年の最新作『2.0.1.1.』は大ヒットを記録。リード曲「Here and Now」はJ-WAVEで15位を記録、全国16局のラジオパワープレイを獲得(同月獲得数はメジャーを含め2位!)。また、フジテレビ「テラスハウス」の挿入歌として使用され問い合わせが殺到! ワーナーミュージックよりリリースされたサントラの1曲目に収録され1万枚のヒットを記録するなど各所で大きな話題となるなど、前作リリースから現在までの快進撃かは凄まじく、“2016 年最も駆け上がったキーボーディスト”としてその動向に注目が集まっています!
また、アルバムの評判を受けFUJI ROCK FESTIVAL、朝霧JAM、RISING SUN ROCK FESTIVAL、SunSet Liveなど全国の大型フェスに出演、数千人規模のステージでオーディエンスを唸らせる。さらに、フランスで行われたジャイルス・ピーターソン主催のWorld Wide Festivalに日本人代表として招聘され、世界から注目を浴びるピアニスト、トラックメイカーへと駆け上がり、ジャイルス・ピーターソンには「11 年間のワールドワイドフェスティバル史上、最も素晴らしいステージ!」と評された。
今作では、絶妙なバランスで調合された音色、メロディー、リズム。甘さに毒味を加えることで生まれるKan Sano独自の楽曲は、まさにジャンルレス! また、前作とは打って変わって全曲打ち込みで音を作っており、Kan Sano流のエレクトロサウンドも体感する事ができる。ポップネスとアバンギャルド、対極の音楽性を混在させた世界観を見事に表現した珠玉の1枚が遂に完成!
先行リリースされた「C’est la vie feat. 七尾旅人」7 インチが話題沸騰の中、ジャイルス・ピーターソンも絶賛するカナダ出身の次世代女性シンガーMaylee Todd、透き通る美しい声で数々のCM楽曲でもおなじみのシンガー島村智才、レーベルメイトでもあり数々のフェス出演で話題沸騰のMichael Kanekoという色濃いラインナップ。そして収録曲中6曲で本人がヴォーカルをとっており、そちらも聴きどころとなっている。
Kan Sano
『k is s』
2016.12.07 Release
01. Penny Lane
02. Magic!
03. Reasons feat. Michael Kaneko
04. C’est la vie feat. 七尾旅人
05. lovechild
06. Can’t Stay Away feat. Maylee Todd
07. Momma Says feat. 島村智才
08. LAMP
09. と び ら
10. Awake Your Mind
11. Let It Flow
OPCA-1031 ¥2,300+tax
BARCODE : 4580246160486
FORMAT : CD
LABEL : origami PRODUCTIONS
Kan Sano / C’est la vie feat. 七尾旅人
MORE INFORMATION
Kan Sano Official Website
http://kansano.com/
Twitter
https://twitter.com/kansano
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